最近は金属の加工が増えて参りました。
それに伴い「表面処理までもお願い」の案件も増えて参りました。
当社は加工屋です。
表面処理は協力会社への依頼になります。
表面処理にも様々ございますが、本日は「焼入れ」について。
と、いうのも、今までは図面に焼入れ指示があったら、その指示部分と加工品を協力会社へ丸投げしていました。「焼入れ=固くする」ぐらいにしか考えていませんでした。
先日、焼入れ屋さんの工場内を見学させてもらえる機会があって、焼入れについて少し勉強できたので、その備忘録の意味も込めて記します。
焼入れの種類
焼入れの種類も多々あるようですが、覚えた焼き入れは「真空焼入れ」「ソルト焼入れ」「浸炭焼入れ」「高周波焼入れ」の4つ。
真空焼入れ
真空中の炉の中で熱する処理。真空中だから酸化しない(?)表面が綺麗なままの処理みたい。材質内部までしっかり焼きが入るとのこと。ウチが焼入れを特別な指示なく依頼した場合、通常はこの「真空焼入れ」になる。
ソルト焼入れ
塩を熱で液化した槽の中に、製品を浸して熱する処理。一般的な空気中で行う焼き入れでは、製品の表面と内部に温度差が生じ、それにより歪みが発生するよう。それに比べソルト焼入れでは、酸化を最小に抑えることができ、また均一に熱処理が行えるとのこと。エアコンやストーブで温まるよりもお風呂に入った方が体ポカポカ・・・というイメージ(?)
浸炭焼入れ
浸炭焼入れって「浸炭」+「焼入れ」だったんですね。「浸炭」で一つの処理、その後に焼入れ処理だったんですね。
浸炭・・・表面層の硬化を目的として炭素を添加する処理(wikiより浸炭)
つまりは、炭素量の少ない材料に、炭素をプラスして焼くってことのようです。S45CやS55Cのように炭素が豊富な材料は浸炭する必要が無いみたい。また、浸炭は表面上のことなので、製品内部は焼きがそれほど入らない。要は、表面だけ焼入れ処理。表面は硬くて強く、内部には靭性がある、という具合にできる処理のよう。
高周波焼入れ
「高周波」ってきくと難しそうだけど、理屈はやっぱり難しい・・・詳しくはwikiでどうぞ(高周波焼入れ)
ざっくりいえば、電気の力で材料を加熱する方法。オール電化のご家庭にはお馴染みのIHヒーターを使うと、お鍋やフライパンが短時間で熱くなるのと同じ理屈です。部分的な加熱になるので、部分的に焼入れができます。浸炭焼入れみたいに、表面は硬く、内部は柔軟にできるようです。
大切なのは冷やすこと
初歩的なことを知りませんでした。すいません。焼入れのポイントは冷やし方なんですね。鉄って熱したら硬くなるんじゃなくて、熱して急冷することで硬くなるんですね。
「焼入れ」っていうので、焼くことが重要と思っていましたが「冷やしが重要」「(加熱する)炉も大事だけど(冷ます)油槽がもっと大事」とのこと。ただ冷やすだけじゃダメ。水とか油とかで「急冷」じゃないとダメ。
また、「焼入れ」と「焼戻し」って別々のものだと思っていましたが、実はペアなんですね。焼入れで材質の硬度をMAXにして、その後の焼戻しで硬度を下げる(調整する)のが基本だと教えていただきました。
ちなみに、「焼き●●」シリーズに「焼ならし」というものがございます。
これは、焼入れレベルの温度(800~850℃)に加熱した後に空冷するプロセスで、これをすると鉄本来の硬さ(焼入れ・焼戻し前の硬さ)に戻るのだとか・・・
文頭のアイキャッチ画像に「BURNING!!(燃える!)」って入れましたが、コレ間違い。BURNINGには冷やす要素がありません。焼入れを英語へ変換すると「quenching」なんですって。
quench・・・静める、黙らせる、水に入れて冷却する
(wikiより焼入れ)
余談/硬度が出ない!
焼入れ・焼戻し後に、メッキ処理し、さらにベーキング処理した製品がありました。その製品をお客様に納めると「硬度が出ていない」とご指摘がありました。焼戻し後の硬度測定では、確かに図面指示の硬度が出ていたのに・・・何で?・・・となりました。調べると「ベーキング処理をすると硬度が下がることが・・・」みたいな内容がWEB上にありました。でも焼入れ屋は「ベーキングぐらいで硬度が下がらないと思うのだが・・・」とのこと。
お客様から製品を預かり、硬度を測定すると、お客様の仰る通り硬度が出ていません。。。
何の事はない、メッキを剥がすと硬度が出ていました。メッキの厚みが硬度測定の邪魔をした様子。お客様にも納得していただけました。ちゃんちゃん