公差について
いろんなサイトでも紹介されているけど、図面の基本「公差」について
まずはじめに公差とは・・・
公差(こうさ、tolerance)とは、機械工学に代表される工学において許容される差のこと。基準値と許容される範囲の最大値および最小値との差を許容差、その最大値と最小値の差を公差と呼ぶ。(WiKiより)
例えば上記イメージ中の「②両側公差」を例にすると、寸法は「10」公差は「±0.1」なので「10.1~9.9の範囲に収まるように作ってね」ということになります。また、「①片側公差」では寸法が「Φ8」公差が「+0/-0.05」なので「Φ8.0~Φ7.95の範囲に収まるように作ってね」ということになります。
加工者側から公差を見てみる。
「②両側公差」の場合、加工者は公差を意識せずに加工設定値を「10」と設定できます。あとは結果的に「10.1~9.9」の範囲に収まっていればOKということ。
一方「①片側公差」の場合、加工者は加工設定値を計算しないといけない。とはいっても、基本的には公差の数値幅の真ん中を計算するだけ。「Φ8.0~Φ7.95の範囲で作ってね」言い換えると「Φ7.975±0.025の範囲で作ってね」ということ。こうすると加工者は加工設定値を「Φ7.975」として加工を進めることができます。
ちなみに、上記の「加工設定値」を「狙い値」、「数値幅」を「レンジ」、「片側公差」を「片公差(かたこうさ)」と当社では言っております。他社ではどうなのかな・・・
狙い値は公差レンジの真ん中を採用することが多い
ややこしいのが「③片側公差」の場合。「5 +0.2/+0.1」は「5.2~5.1の範囲で作ってね」となる。じゃあ「5.1 +0.1/0」とか「5.15 ±0.05」で良くね?と言いたくなることもありますが、きっと設計者さんの何かしらの意図やら背景やらあるんですよね?(「気持ち大き目ね」とか「できるだけ小さくね」という意思表示だと推察しています)
大変なのは片公差がいっぱいの図面が来た時。ほぼ100%で3Dデータが寸法値で作られているので、加工に取り掛かる前に図面をチェックし一つひとつ片公差を計算し3Dデータに反映しないと行けない。少しぐらいの量なら問題ないけど、いっぱいあったら大変。仕方が無いけど大変。。。
あと覚えておく必要のある公差に「はめあい公差」と「幾何公差」があるけど、幾何公差は内容がいっぱいになるので後日に。
普通公差・一般公差
たまに「どんな公差を入れたらいいですか?」「公差は全部の寸法に必要ですか?」と質問される方がいらっしゃいます。
公差を入れる必要が無ければ入れないで下さい。全ての寸法に公差が入っていたら、加工をお請けすることが出来なくなるかもしれません。
公差は加工者にとってプレッシャーです。一生懸命に加工したけど、検査して公差に入っていなかったらやり直しですから。材料費も加工時間も消えてしまいますから。
公差の指示が無ければ、多くの場合は普通公差(一般公差)を参照します。できるだけ普通公差に収まるように加工をします。普通公差を超え製品として機能障害がある場合にやり直しをします。※今日では機械精度がいいので普通公差に収まることが多いです。
精度目安 | 0.5-3.0 | 3.0-6.0 | 6.0-30 | 30-120 |
---|---|---|---|---|
精級 | ±0.05 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.15 |
中級 | ±0.1 | ±0.1 | ±0.2 | ±0.3 |
粗級 | ±0.2 | ±0.3 | ±0.5 | ±0.8 |
※表は「JIS B 0405:1991」を参照 ※単位は「mm」
普通公差の目安としては、MC切削加工なら精級~中級。真空注型や光造形なら中級~粗級です。公差を入れる場合は、普通公差より精度が要求される箇所に限ってもらえると嬉しいです。公差を入れる多くの場合、その部位と何かが嵌合(かんごう)すると思われます。嵌合品との間に十分な余裕(普通公差以上の余裕)がある場合や、外観部分などの公差を意識しなくていい場合は、できるだけ入れないでいただきたいです。
はめあい公差
はめあい公差は「穴と軸の公差」です。
例えば、Φ10の穴にΦ10の軸は入るでしょうか?入らないでしょうか?
答えは穴より軸が少しでも細ければ入ります。
穴より軸が少しでも太ければ入りません。当たり前です。「穴より軸が若干でも細くなるように(ちゃんと入るように)」の指示をするために存在するのが「はめあい公差(嵌合公差)」です。
公差指示をしないと加工者は何も意識せずに加工します。だって、まさかこの軸があの穴に入るなんて思わないから。多くの場合に軸の図面と穴の図面は別々に描かれています。また「この軸があの穴に入りますよ」という嵌合を記す内容もいただけません。ちゃんと嵌合の指示があるか、「これがあそこに入る!」と気が付いたときに意識します。しかし、キツめに入れるのか、ゆるめに入れるのかの嵌め具合はやっぱり分かりません。だから、はめあい公差は存在します。
穴公差はアルファベット大文字(例:H7)、軸公差はアルファベット小文字(例:g6)で示されます。穴公差と軸公差は基本的にセットです。どんなセットにするかは、嵌め具合に応じて変わりますが、よくあるセットが「H7g6」とか「H7h6」とかです。
H7g6・・・「すき間の小さい運動のできるはめあい(位置ぎめ)。ほとんどガタのない精密な運動が要求される部分」
H7h6・・・「潤滑剤を使用すれば手で動かせるはめあい(上質の位置ぎめ)。部品を損傷しないで分解・組立てできる」
上記ははめあい選択の基礎を参照しましたが、分かりやすく掲載されているので、穴公差と軸公差のセットを決めるときは参考になるかも。
嵌合公差 | 0-3.0 | 3.0-6.0 | 6.0-10 | 10-18 | 18-30 |
---|---|---|---|---|---|
穴公差 H7 | +0.010 0 | +0.012 0 | +0.015 0 | +0.018 0 | +0.021 0 |
軸公差 f7 | -0.006 -0.016 | -0.010 -0.022 | -0.013 -0.028 | -0.016 -0.034 | -0.020 -0.041 |
軸公差 g6 | -0.002 -0.008 | -0.004 -0.012 | -0.005 -0.014 | -0.006 -0.017 | -0.007 -0.020 |
軸公差 h6 | 0 -0.006 | 0 -0.008 | 0 -0.009 | 0 -0.011 | 0 -0.013 |
軸公差 k6 | +0.006 0 | +0.009 +0.001 | +0.010 +0.001 | +0.012 +0.001 | +0.015 +0.002 |
上記にも記載しましたが、あまり厳しい公差を要求されたら、加工をお請けすることが出来なくなることもありますから、必要最低限でほどほどな公差でお願いしたいです。。。