今回は結晶性樹脂と非晶性樹脂についての内容。
なぜ記事にしようと思ったかといいますと、結晶性と非晶性の違いを知っておき、またある樹脂がどっちに所属するかを覚えておくと、どういう加工が可能で、何ができないかを判断しやすくなるからです。
樹脂は大きく分けて、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分けられます。
熱可塑性樹脂はさらに、結晶性樹脂と非晶性樹脂とに分けられます。
引用元-https://www.polyplastics.com/jp/product/lines/cr/

結晶性樹脂・・・分子鎖が規則正しく配列された状態を結晶領域といい、この結晶領域の量の比率が高いもの(結晶化度の高いもの)をいう。
引用元-http://www.koito-j.com/technology.html
非晶性樹脂(非結晶性)・・・結晶化度が極めて低いか、結晶化状態になり得ない高分子物をいう。無定形高分子又はアモルファスポリマーと呼ばれている。
詳しいサイトを見たら難しく書いてますけど、とりあえずは次のそれぞれの特徴と違いをザックリ覚えておけばOK
比較ポイント | 結晶性樹脂 | 非晶性樹脂 |
---|---|---|
透明性 | 不透明 | 透明(透明な材料がある) |
耐熱性 | 強い | 弱い |
硬さ | 硬い (高剛性・高硬度) | 柔らかい (柔軟・強靭) |
充填性 | 流れ良好 | 流れ悪い |
摺動性(摩擦性) | スベスベ (抵抗-小) | ザラザラ (抵抗-大) |
折り曲げ | 割れやすい (パキっと分裂) | 割れにくい (グニュッと曲がる) |
収縮率 | 大きい (1%以上) | 小さい (1%以下) |
反りの発生 | 反りやすい | 反りにくい |
耐溶剤性 | 優れる | 劣る |
樹脂例 | PPS・PBT・PEEK・PA・PET・POM・PP・PE・PI・LCPなど | ABS・PC・PMMA・PVC・PS・PES・PAIなど |
結晶性樹脂はガテン系。日差しに強く(耐熱性に優れ)、黒々とした肌(不透明)、ガチムチ筋肉モリモリ(高剛性・高硬度)、でも意外に毛は少ないよ(スベスベ)、ハッキリさっぱりした性格だけど(充填流れ良好・割れやすい)、心が折れると凹みやすい(反りやすい・収縮大きい)
それに比べて非晶性樹脂はインテリ派。透き通るような肌だけど(透明)、実は毛深いの(ザラザラ)、暑さに弱いし(耐熱性弱)、ナヨナヨしてるって言われるけど(柔軟)、ハートは結構強いのよ(強靭・割れにくい)、ちょっとやそっとの文句で凹みません(収縮小さい・反りにくい)
(アイキャッチ画像の意図を理解いただけましたか?)
はい。勝手なイメージはさて置き、今回は「耐溶剤性」に注目いただきたい。
溶剤というものがあります。その名の通り「溶かす液剤」です(液じゃなくてもいいけど)。これをプラスチックに掛けると、プラスチックは溶けます。簡単に溶けるか、溶けにくいかを示すのが「耐溶剤性」です。
当社にも溶剤があるのですが、POMやPBT、PPに掛けても変化がありません(実際は微弱な変化はあるかもしれませんがパッと見では分かりません)。一方でABSやPCに掛けると、意図も簡単に溶けます。
なんでそんな溶剤があるかというと、加工で用いるからです。樹脂切削加工における「分割+貼り合せ」で用いるからです。1つの部品を加工しやすいように複数に分割して作り、後で合体させます。普通の接着剤(例えばアロンアルファとか)でもくっつきますが、表面でくっついているだけなので、力を入れると剥がれてしまいます。普通の接着剤よりは、一度溶かしてから固めた方がきっと丈夫です。樹脂版の溶接みたいなイメージです。

要は「ABSやPCだったら溶剤で溶かせるから分割+貼り合せの加工ができるよー」ということをお伝えしたかったワケです。POMとかPBTとかだったら、溶剤では溶けないから、分割+貼り合せ加工ができません(貼り合せが接着剤でよければできます)。
ちなみに、結晶性も非晶性もGF(グラスファイバー/ガラス繊維)を混ぜると収縮が軽減し、耐熱性や強度もアップします。その半面、GF入りの材料を切削加工する際には注意が必要で、めっちゃ反りやすいです。なんで反りやすいのかは後日に記載します。
今日はここまで。