物を形作るモノづくりの基本動作は「切る」「貼る」「曲げる」に大分類できると私は考えています。そしてその基本動作の組み合わせで様々な製品が生み出されています。
今回は「切る」ことについて。
切る(切断)
「切る」加工は主にシート形状の材料に用いる。分かりやすいのは「カッターナイフで紙を切る」。ただし、紙だとカッターでいけるが、硬いものや厚みのあるものは切れない。だから、刃物の代わりになるものも存在する。加工の目的は「物を切り分ける」こと。
刃物で切る加工
剪断(せんだん)
はさみと聞くとちゃちいイメージだけど、ギロチンなら切れそうなイメージ。どちらも同じ剪断加工。材料に刃物を食い込ませて分離させる加工。刃先が斜めだと、切り口も斜めになる。カッターも包丁も同類。シャーリング加工ともいう。
鋸加工
鋸(のこぎり)も剪断加工に入ると思うが、刃物が往復するもしくは連続するイメージがあるので、あえて別分類に。鋸は刃物が往復して切断するが、丸鋸やバンドソーという機械は一方向に刃が送り続けられる。バンドソーに似た機械にワイヤーカットがあり、これはワイヤーに電気を流して切る方法。
打ち抜き
パンチング加工。型を作り、型を材料に押し当てて、その部分を抜き取る工法。クッキーの型抜きと一緒。これも剪断加工に入るとは思うが、あえて・・・。
刃物に代わるもので切る加工
レーザーカッティング
光パワーを圧縮したレーザービームを使ったカッティング方法。精密な「切る」には主要な方法。しかも速い。でも重ね切りは不得意。
ウォータージェットカッティング
超高圧にした水が刃物の代わり。水圧で切る加工。水の中に混ぜもの(例えば砂)を入れて切削性を上げることも。水だけど鉄なんかも切れてしまう。
削る(切削)
「削る」加工は主にブロック形状の材料に用いるが、シート形状のものも加工できるので「切削」というのでしょう。加工の目的の多くは「形作る」こと。彫刻のイメージ。不要な部分を削り取る行為。
フライス加工
ミーリング加工とも。要は回転する刃物で削る加工。刃物名前はエンドミル、いろんな種類がある。フライス加工機もいろんな種類がある。加工者はフライス加工機の刃物を都度に取り付ける必要がある。でもそれでは大変なので、自動で刃物を取り替えてくれるフライス加工機の進化版「マシニングセンター」なるものがある。
旋盤加工
フライス加工は刃物が回転するが、旋盤加工は材料の方が回転する。回転している材料に刃物(バイト)を押し当てて加工する。そのため製品の形状は円筒形になる(業界用語で「マルモノ」)。フライス加工でもマルモノは作れるが、中心軸が出にくい。例えばギアの様な回転する製品など、中心軸が大切な製品は旋盤加工になる。
放電加工
(削りたい形状の刃物)型を作り、電気を流して材料に押し当て、その部分を除去する加工。金属材料に用いる加工方法。刃物残り箇所の除去や、小さすぎて刃物が入らないような箇所の除去に活躍。
いろんな加工機があるけれど、汎用機とNC機の2分類される。
汎用機は一昔前の加工機で、加工者が目盛りやダイヤルを微調整しながら使う機械。加工に感覚も要求され、その感覚が鋭くなると「職人」として尊敬される。一方でNC機は最近の加工機で、NCは「numerical control(数値制御)」の略。予めプログラムした内容で機械が微調整をしてくれる。NC機でも最後の最後は加工者の感覚で製品の善し悪しが決まるが、加工プログラムと段取りがしっかり定着していれば、ある程度に品質良好な製品を職人でなくても量産することが可能になった。これは加工感覚の鋭い職人が減少する可能性を意味する。
今日ではNC機の加工プログラムの制作にCAM(キャム)を用いることが多くなっている。CAMはパソコン上で加工プログラムを半自動的に作ってれるシステム。つまり「パソコン+NC機」で加工することが増えてきた。こうなると、一昔前の職人の中にはパソコンが苦手な方も出てくる。そんな人達を補助するためか、CAMでの加工プログラム制作専門の人(CAMオペレーター)ばかりを集めた会社もあるほど。
汎用機 / NC機 ⇒ 感覚世代 / パソコン世代
こんなイメージを持っているけど、極端すぎるかな。。。
でも実際問題として、フライス加工機の初代に当たる機械を「彫刻機」というのですが、この彫刻機の使い手が減っているようです。仕事には「いちいちプログラムしなくても、彫刻機でやった方が早い」という内容もあります。それができる人が減っているのは問題だと思う。