前回では「試作」とは何かについて記載した。そして、モノづくりにおける試作とは、量産の前の工程のモノづくりとまとめた。
今回は「試作業者」について。
「試作をする人でしょ?」その通り。でも実際に試作業者がドコでナニをしているかをご存知で無い方は多いので。
まずは、試作をする人というより試作をしたい人について、少し具体的なイメージを持って表現。
例えば、いま私の目の前にあるリンゴマークのついたスマホ。このスマホには約1,000個の部品が使われているとかいないとか。(しかも「5」の中身は、50%超が日本企業らしい。すげー)
このスマホのメーカーはリンゴマークの会社ですが、だからといって全部品を一社で作っているわけではありません。様々な会社へ部品の製造を依頼し、様々な会社が頑張って部品を作り、できた部品をリンゴマークの会社が組み立てているわけです(たぶん組立も他の会社がしてると思うけど)。
(とりあえず、ココでのリンゴマークの会社ことを開発元メーカー、部品を作っている様々な会社のうちの1社を部品メーカーAとする)
で、「試作」の視点で話をすると、この例の場合、試作をするだろう会社は2者ある。もちろん、開発元メーカーと部品メーカーAのこと。
開発元メーカーは次のシリーズのイメージを形にするために試作する。これは分かりやすい例。そして実は部品メーカーAでも試作をする。部品の製造依頼を受けてすぐに、ホンチャンの部品(量産部品)を作ることはほとんどない。ちゃんと試作の工程を経て、確認やテストを行ってから量産へ移行する。
(ココから試作業者が出てきます)
開発元メーカーも部品メーカーAも試作をしたい人ということはご理解いただけると思う。簡単な試作、例えば形をみるだけとか、そんな内容だったら最近は安価な3Dプリンターもあるし、それぞれの会社内で行うことだろう。しかしそれには限界がある。設備的な限界や、技術的な限界。結論から言うと、その限界を超えた試作内容を請け負うのが「試作業者」。試作をしたい人ができない試作をする会社。
開発元メーカーの仕事は開発をすること。市場ウケの良い商品を考えること。だから基本的に工場を持たない。工場を持ったとしても、多くは組立のための工場。細かい部品は部品メーカーAやらBやらCやら・・・が作る。工場を持たないということは、試作をする設備も持たない。そこで試作業者が登場する。開発元メーカーが試作内容や試作目的を伝え、それをもって試作業者はイメージを形にする。
部品メーカーAの仕事は市場に流れる部品を作ること。部品の量産屋。市場に流れるものだから、それは綿密に計画を立て、安全を重ねて量産へ臨む。ちゃんと試作をして、使える部品かどうかを検証する。しかし、その試作は部品メーカーAの中では行わない。「なんで?」って思うかもですが、部品メーカーAはあくまで量産屋。モノづくりの設備は量産用。数個~数百個レベルの試作に量産ラインを動かすわけにはいかない。しかも試作には失敗がつきもの。作ってダメだったら、少し改造してまた作って試す・・・を繰り返すわけですから、都度にラインを動かしてたら予算が合わない。というより、そもそも試作のためにラインなんて作れない。そこで試作業者が登場。数個~数百個レベルの試作だったら、試作業者に依頼した方が安いし速い。
(まとめ)
試作業者は、試作をしたい人ができない試作を請け負う会社のこと。
数個~数百個レベルの試作なら、試作業者に任せた方が安いし速い。
次回も試作業者を掘り下げます。